2008-01

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マリアとヘレブ

町から遠く離れた大きな農家に一匹の猫が住んでいました。
茶色に所々白や黒が混ざった、まるでサビた鉄のような猫。
名前はマリアといいます。
彼女は小さな生き物が大好きです。どこからか小さなリスや
ネズミを連れてくると自分のお腹の下に入れて暖めます。
「にゃぁーにゃぁー暖めてあげる」
「にゃぁーにゃぁーエサを持ってきてあげるね」
マリアがそういってトカゲや小さな虫たちを捕まえに行って帰ってくるとマリアが連れてきた小さな動物たちはいつもいなくなっていました。

ある日、ご主人のペーターが大きな木の下で草刈りをしているとかさかさと頭の上に
葉っぱがふってきました。

ペーターは頭に降ってきた葉っぱを払うと。

「これはいやなものが住み着いたなぁ・・・悪さをするにちがいない」と木の上を睨みました。

木の上にいたのは一組のカラスのつがいでした。かさこそとペーターの上に葉っぱを落としたのは自分たちのひな鳥を守るためでした。

「夜が更けたらこのカラスどもを始末するか」ペーターはそういうと家に戻っていきました。

その夜、ペーターは木の棒と水桶に一杯の水を組んでカラスの巣に向かいました。
ペーターは木に登ると木の棒で親鳥ごとたたき落とすと落ちた巣に水をかけ
「これでわるさもできめぇ」といいました。

遠くでご主人が巣を落とすのを見ていたマリアはご主人が家に帰るのを確かめると一人で木の下にいってみました。

ぐちゃぐちゃと木の枝が絡まった巣、その上に二匹のカラスが死んでいました。
「おいしそうなカラスだこと」マリアはそう言うと死んだカラスを食べようとしたのですが
でもその下から「きゅーきゅー」という小さな小鳥の声が聞こえました。
マリアが前足で死んだ親鳥をどけると真っ黒なかわいいカラスの赤ちゃんが出てきました。
マリアは大急ぎでカラスの赤ちゃんをくわえると納屋の上の自分の寝どこにつれていきました。

「どうしよう。食べようかしら・・・」
「どうしよう、どうしよう・・・」マリアがカラスの赤ちゃんのまわりでぐるぐると回りながら悩んでいるとカラスの赤ちゃんがよちよちとマリアの方に近づくと「きゅー」と一声鳴きました。マリアはその声を聴くとどういうわけだか死んだお母さんのことやおばあさんのことを思いだしたときのように胸がきゅんとしました。

マリアはカラスの赤ちゃんを自分のお腹の下に入れるとさび色の体をクルッと丸めてカラスの赤ちゃんを暖め始めました。

「むかしおばあちゃんから聞いた話をしてあげるね。
昔々、動物が人間の言うことを聞かなくても良かった時代。
人間も動物も同じ言葉を喋っていた時代。
水が森や村をおおいつくしたんだよ。
何日も何日も猫や犬、牛、それにカラスや鳩までが一緒の船でこの水から逃げたんだよ。他の動物も仲良くこの船で暮らしていたんだけど・・・
ある日おきると水がどんどんとなくなっていたんだよ。
それで人間が本当に水がなくなったどうか調べるために自分たちにとって一番必要でないヘレブというカラスを空に放した。
ヘレブは何時間も飛びようやく小さな小さな丘を見つけてそこにオリーブの木を見つけたんだよ。きっと疲れていたんだろうね。
ヘレブは飛べなくなっていた。
そこに鳩がやってきたから一枚のオリーブの葉を鳩に渡してお願いだからみんなに伝えておくれと頼んだんだよ。
鳩も一生懸命に飛んでそのことをみんなに伝えるために帰っていった。
一枚のオリーブの葉をくわえて・・・
船に帰ると人間が待っていたので鳩は一生懸命にカラスがオリーブの木を見つけたことをはなしたんだけど・・・
どういうわけだか人間に言葉は通じなくなっていた・・・」

マリアはお話を終えるとカラスの赤ちゃんにヘレブという名前を付けました。

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塩と砂

 男が振りかえったとき、そこには真っ白な塩の柱が立っていた。一体どうしてこんなところに塩の柱が立っているのだろうか・・・男は怪訝な顔をしてその場で少しの間だけ考え込んだが、考えるのを辞めると歩き出した。

 女が振り返ったとき、そこには真っ白な塩の柱が立っていた。女はその塩の柱を見て、一筋だけ涙を流した。でも、その塩の柱がどうしてここにあるのか、そしてその塩の柱が何なのかは解らなかった。
 ハンカチで涙をぬぐうと女は歩き出した。女の心には悲しみも何もなかった。

 僕はそんな塩の柱になりたかった。一緒に歩いていようが、細胞一つ一つがその存在の意味である結合を解いて塩の柱になる。

 誰の記憶にも残らない。まるで夢から覚めて、時間が経つにつれその夢が薄れていき、突然消えるように消えて無くなる存在。

ひょっとすればそんな塩の柱になれるかも知れないと僕は砂漠を旅をした。

ある日、ベトウィンの老人と出会った。全く目の見えぬ杖を持って歩く老人だった。僕はその老人を月夜の砂漠に連れ出すと懇願するように聞いた。

「僕は見えないだろう」

老人は笑いながら「ワシはうまれてからずっとめがみえんのじゃ。ところでお前にはワシが見えるのか」と僕に聞き返した。

「見える」僕がそう答えると老人は足下の砂をかきまわすとそういうものだと僕に笑いながら言った。

僕はそれから何年も歩き続けた。そして町に着いた。真っ赤なシャツを着た男達が歩き回る町だった。そのなかに一人だけ女が居た真っ青な服を着た女だった。女は赤シャツの男達になにかを聞き回っているようだった。それも必死の形相をしてだ。

あるきにくい、まるで無節操な職人が毛足をのばしすぎたくらいに道は砂で埋まっていた。僕はその絨毯のような砂の上を、ふかふか、そしてするすると歩き僕はその女の声が聞こえるところまで近づいた。

「ねぇ、私は誰?」女はそう男達に聞いていた。だが、どの男達も女を無視して早足で女の前を通り過ぎていった。

旅で何年も人と話していないせいだろうか、僕は女に質問して貰おうと近づいていった。しかし、女は何も聞いてこなかった。

僕はその女の態度にハラが立ち、語尾を強めていった。
「どうして、僕に何もきかないんだ」と
女は答えた
「だって、あなたは私のこと知らないでしょう」

彗星

見渡す限り星が拡がるお空を自由に飛び回るジェニーは汚れた泥の固まりが凍った小さなお星様でした。

ちっちゃくとも大きな光るお星様の側を通ると身体が暖められて綺麗な光るシッポを長く長くひっぱって飛び回っていたのです。

ジェニーはとっても幸せ。だって、きれいなシッポを引っ張ってとびまわっているといろんなお星様が声をかけてくれるんですから

空をいつものように飛んでいると大きなお星様が声をかけてきました。

ちっちゃなお星様とっても君はきれいだね

ありがとう大きなお星様、わたしの名前はジェニーって言うんだよ。遠くから飛んできたんだよ。きっと、大きなお星様も知らない世界を沢山みてきたんだよ。

ジェニーはお話が大好き。火山が沢山あるお星様の話や、とっても優しく光るお星様の話、そして白く大きくなって消えていこうとしているおじいさん星の話をしました。

大きなお星様は嬉しそうにジェニーの話を聞いてくれました。

何万年も何十何百万年もジェニーは空を飛び続けては他のお星様にお話しをしてきました。

でも、ある日、真っ赤な帽子を被った魔法使いがジェニーに近づいてきました。

ねぇねぇ、君ってちっちゃな泥で出来ているんだね。かっこうわるいよ。

そういわれるとジェニーは自分の姿が恥ずかしくなりました。

ねぇねぇ魔法使いさんどうすればいいのジェニーがそう聞くと魔法使いはジェニーに大きな鉄の服をくれました。

どうだいこれで君の泥が見えなくなったよ。

ありがとう魔法使いさん!ジェニーは元気良く飛んでいきました。

でも、いつもなら綺麗なシッポをひくのにシッポが出ませんでした。たぶん、大きなお星様の光がジェニーの身体を暖めなくなったからです。

ジェニーは黒い点のようになりながら空を飛びました。

誰にも見えないから誰も声をかけてくれませんでした。だから、さびしくなって泣きながら
飛んでいると魔法使いがまた声をかけてきました。

どうしたの小さなお星様

あのねひとりぼっちで寂しいんだ。

すると、魔法使いはジェニーを大きな星の側に置いてくれました。

ありがとうありがとう魔法使いさん!!何度も何度も本当にありがとうとジェニーは言いました。

ジェニーは新しい場所で大きなお星様と話をしようとしました。でも、お話しすることがなにもありませんでした。そして、もうどこにも飛んでいけなくなっていました。

ジェニーは真っ黒な星になってしまったとさ。

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